Kiev・Contaxの距離計(シリンドリカル)の調整
 写真はKiev4をKiev4a化するさいに部品をハイエナされてしまった4a-type2を撮影用に解体しています。

 Contax・Kievの距離計は基本的に縦ズレの発生しづらい構造をしていますが、無限方向のズレは発生します。特にシャッター回りのOHを行ったボディの場合、距離計窓から視野窓まで虚像を導いている馬鹿でかいプリズムがあるんですが、こいつが構造上ぽろっと抜けてしまいます。抜けてしまうと距離計がズレちまうわけでして、はい。そんなこんなでシャッターを整備した機体で距離計までは調整していない個体というのがいくつか見受けられます。私の個体も御多分にもれずシャッターOHの経験がある個体なのですが、距離計修正を受けた形跡はありません。今回はズレ的には微小で楽勝のはずだったんですが、結局フルOHに近いことをせざるを得ませんでしたとさ。

 普通RF機の距離計というのはライカやハイマチックのように虚像のハーフミラーの向きを変えて測距するのもんです。モノの大小に差はありますが、ライカM6だろうがオリンパスXAだろうが大和級の主砲射撃用の測距儀だろうが基本構造に大きな差はありません。ところがContax・Kievの距離計の稼動部は距離計対物窓そのものにあります。

 んじゃどうやって測距するのかというと、凹面レンズになってる測距対物窓から入ってきた光を測距対物窓の裏にある凸面レンズで屈折させ、基線長分の馬鹿でかいプリズムを通してファインダー視野に導きます。このとき凸面レンズの位置を左右に動かすと虚像の位置が左右に動きますので、それで測距できる仕組みです。

 左の写真(拡大写真)がKiev4a-type2に実装されている距離計なんですが、上が無限遠の状態、下が0.9mでの状態です。このこのように固定された凹面レンズ(青く着色)の内側をヘリコイドの回転に合わせて凸面レンズ(赤く着色)が動くことによって虚像を生み出す位置をずらし、測距出来るようになっているのです。この仕組みはツァイス・イコンがContax1を開発するときに発明したシリンドリカルという測距方式だそうです。
  
 
 
○ちょっぴりズレてる場合
 Kiev2、Kiev4a、Kiev4amの場合結構簡単でして、まずフォーカシングギアの直下、エプロン脇とセルフタイマーレバーの間のシボ皮をちょっとだけ引っぺがします。ここを剥がした下にエプロン固定ねじの1本が埋まっています。ほかにエプロンを固定しているネジ6本を全部抜いてしまいます。するとフォーカシングギアをヒンジにするように前板を持ち上げるとぺろっと外れると思います。Kiev-3、Kiev-4といった露出計が載ってるモデルは軍艦ヂキャストをごっそり抜かないと前板が外れませんので要注意。

 微小なズレの場合は赤い矢印に示してある距離計窓の下側で微調整します。距離計窓を下側からのぞくと全部で4本のネジがあります。そのうち外側の2本を緩めると距離計のレンズが左右に動きます。動かすことで距離計目盛り1段分程度のズレなら修正できますので、無限遠にして数キロ先の物体にあわせ、距離計を修正してください。数キロ先のモノと距離計が合致するとそれでほぼ距離計は問題ないでしょう。無限遠で確認した後は念のため5m、2mとチェックしておくと確実です。ただまぁZorkiと比べると微調整しづらいんですけどね。
 
 

 ○ごっつズレてる場合
 前回入手したKiev-4a type2みたいにバカほど距離計がずれている場合の修正方法です。

 ※一部のサイトで「ヘリコイドとカムの連結ギアをずらして調整」という方法が紹介されていますが、その方法で調整するとシリンドリカルの測距用凸面レンズの連動がカムから外れる恐れがあります。出来る限りずれの大きな場合はこちらの方法で調整してください。

 原理的にはちょっぴり調整と同じことをやるんですが、軍艦部を解体しないと出来ません。軍艦部ダイキャストをひっぺがすまでの下りはWeb上に色々転がってるので参考にしてください。少なくともKievの場合、露出計の有無で本体側の差異はまったくありませんでした。

 脱線しましたが距離計修正の続きを。軍艦部を抜くとボディ前側をどでかいプリズムが通り抜けています。これがファインダーの中身そのものと測距部の光を導いているものです。そりゃこんな仕組みだと縦ずれは出ませんよ。ボディ右側の対物窓の部分に測距の仕組みがあります。ヘリコイドから伝わった回転運動が対物窓裏側の凸面レンズを左右に動かすのですが、この左右位置を結構広い範囲で修正できるのです。対物窓の裏側、遮光紙を少しずらすとシャッター速度&巻き上げダイアルの下に1本ネジが見えるはずです。こいつを緩めると凸面レンズが左右に動くようになりますので、これでまず大まかな修正をしてしまいましょう。大体の修正が出来れば固定し、あとは前述の「ちょっぴりずれている場合」の方法で微修正します。この測距の出来は凄まじくよろしいので室内で1.5mと4mで調整しただけでほぼ無限遠も出ちゃいます。近接であわせて無限がずれるだとか、無限であわせて近接でずれるだとかいう場合がありいますが、その場合はヘリコイドとの連動カムが載っているステンレス製の板が変形してしまってます。

 ところでContaxやKievはファインダー視野に比して妙に虚像がアンバー系で明るいのも特徴なんですが、ファインダーを覗いて虚像が見えづらい個体がたまにあります。普通のRF機だとハーフミラーの劣化を疑うわけですが、Contax・Kievの場合は測距窓側の凸面レンズがどろどろに汚れている例がほとんどです。どうせ測距調整してしまうのですし、時間があればプリズムから保護ガラスから全部洗っちゃうとすっきりしますよ。ちゃんと掃除してあるContax・Kievのファインダーって結構良好な視界をしているもんです。
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