考察6:動物性脂質・植物性脂質
 アルファは動物性のタンパク質が消化できないとある。しかしこれは、動物性タンパク質が消化できないのではなく、動物性食品に含まれる脂質が原因で消化できないと考えるとどうだろうか?

 植物性脂質はリノール酸を多く含み、多くが不飽和脂肪酸で構成されている。それに対して動物性脂質の場合、飽和脂肪酸を含む。以前は植物性脂質が健康によいとされていたのは、抗酸化性を持つリノール酸を多く含むという点で、コレステロールが血管内にたまりにくいとされていたからだ。ちなみに飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸は、その構造上の違いで名づけられており、二重結合の有無で区別されており、植物油は不飽和トリグリセリドとも呼ばれる。植物油が常温では液体で動物脂肪がその動物の活動体温以上で液体になる理由もその飽和・不飽和の脂質の含有率の違いで、飽和脂肪酸が中心の結晶だとその構造はジグザグながら直線的な構造になるのだが、不飽和脂肪酸が混ざると規則正しい結晶配列が不能になる。これが融点の違いの原因となる。トリグリセリドを融解するには安定化している結晶構造を破壊する必要があるのだが、規則正しい構造をしている結晶は直鎖自身の結合力と鎖同士の結合力から結晶構造を破壊するのに大きなエネルギーが必要となり、結果的に融点が高くなる。それに対して結晶構造が規則的でない場合、鎖同士の結合力が弱く、簡単にその構造を破壊することができ、融点も低くなる。

 実はタンパク質の代謝にも脂質がかかわっていて、タンパク質をプロテインリパーゼなどで分解したあとに出てくるものは、いわゆるコレステロールとリン脂質、グリセロール、脂肪酸なのだ。これは体内に吸収された後、余剰の養分として蓄えられるキロミクロンという物質の代謝の際の話なのだが、これはすでに一度吸収されたものの話なので、ちょっとパスしよう。

 まず脂質を摂取した場合、大雑把に言うと胃と十二指腸、小腸で脂肪酸とグリセリンに分解される。ここでかかわってくるのが脂肪酸だ。前述のとおり飽和脂肪酸を含む脂質はその結晶構造の破壊に、より多くのエネルギーが必要となる。チョコレートなどのカロリーオフ食品で下痢を起こすということがあるが、これも含まれる脂質が原因でおこることであり、同じことがアルファの体内で起こっていると考えてもおかしくはない。ロッテのZEROなども同様に、多価飽和脂肪酸を多く含み、人間ですらあまりそれが多いと消化に苦労し、内蔵機能の弱い人だと下痢を起こす。アルファがA7M2の型番のとおり試作機で、消化器系に試作品が使われていたとすると、その多価飽和脂肪酸の生分解系に問題があり、動物性脂質の消化に難があるのはうなずける。実際にはM3のものと限りなく近い消化器官を装備し、機械設計上の問題はないそうであるが……。そうなるとやはり考えられるのは、多飽和脂肪酸の検出及び処理関連のソフトウェアに何らかの解消しきれていないバグを抱えている、と考えるほうが無難なんだろうか。

 魚類の脂質も実は不飽和脂肪酸を多く含み、その構造はどちらかというと植物性脂質に近いものがある。アルファは「動物性タンパク質がダメー」って思って魚も食べなかったようだが、もしアルファの動物性タンパク質がダメな理由が肉に含まれる動物性脂質であったとすると、低脂肪乳などだと普通にのめるんじゃないかと思う。
参考文献:
基礎有機化学、R.J.Fessendenら、化学同人
コーンス・タンプ 生化学、E.E.Connら、東京化学同人
(C)1998/2007 Takayuki Kazahaya