A7シリーズは限りなく人間に近く製作されている。そのことは深い悩みなどがあると、それに伴って精神アルゴリズムも変化することからも確認できる。1999年12月号掲載分のなかで、ココネはアルファが初瀬野オーナーへと残していった手紙について、見たか見なかったかは知らないが、それのおかげで一番眠ることができなかったであろうことが描かれている。ロボットである場合、われわれの一般的な考えからすると、睡眠は必要ないようにも考えられる。また考え方がパターンどおりにのみ働く場合、その意思の多くは無味無臭なものとなり、作品に描かれているような微妙な心の動きなどは現れないだろう。
各所の掲示板でも99年12月号発売直後からココネが手紙を読んだか読まなかったかという議論がなされた。筆者は読みたいけれども後一歩のところで理性が働いて読まない、それが一番中続いて結局眠れなかったんだと思った。これとそう反する意見として、読んだ結果アルファのオーナーへの思いがひしひしと伝わり、それで興奮して眠れなかっただと言うものもあった。どちらの意見を取ったとしても、ココネは精神的なものが理由で眠れなかったのだ。眠りが精神アルゴリズムを安定させるためにあるのだと考えれば、もし機械として安定して動作するためには、そういう妨げがあったとしても、強制的に睡眠モードへと移行するようにプログラミングするのが機械設計のセオリーであろう。しかしA7シリーズはそれをしない。あくまで眠りに関しても、非常に人間的に機能するようにプログラミングされているのだ。
ただこの眠れないという精神的な動きはやはり、各個体ごとの正確などの個体差も多分に影響するのだと思う。筆者が「見たいけど見ない」を繰り返して眠れなかったんだと判断したのは、ココネのきっちりとした性格からである。これがアルファとココネが逆の立場ならどうだったかと聞かれると、やはり読まなかったんじゃないかとも思う。ただアルファの場合、しばらく思い悩んでから自分で納得し、寝てしまうかもしれない。
A7の存在意義の話にもかかってくるが、こういう風に彼女たちを設計したのは、ロボットをストレスなく人間社会へと溶け込ませるための設計者側の配慮じゃないだろうか?性格などはそれぞれの個体の生活環境などの影響を大きく受けつつ、アルファ、ココネ、丸子などはっきりとした個性へと成長するのだろう。ただここで疑問ができないでもない。それは精神的に成長するということはつまり、老いという存在も付きまとうということである。成長だけして老けない。この点はいったいどう処理しているのか、それとも老けないように設計されているのか、ちょっと知りたい気もする。 |