考察2:海面上昇について
 ヨコハマ買い出し紀行の世界の大きな特徴として、海面の上昇が挙げられる。温暖化の影響で極地や氷河の氷が解け、海面が上昇したそうだ。ここで、ポストカードブックや単行本1巻を持っている人(これを読んでいて持ってない奴はいないとおもうが)はすぐに見て欲しい。画集なら1枚め、単行本なら20ページ1コマ目である。ここに当時の地図が載ってある。その地図から推測すると、アルファ達が生活する時代には、20mくらい海面が上昇していることになる。それくらい上がらないと、鴨居島や小田和湾は生まれないのである。下手すりゃもっと上がっているかもしれない。なぜなら、引き潮のときは鴨居島が島じゃなくなるかもしれないからだ。

 ここで、大きな矛盾点がある。聞いたところによると、埼玉県の南部でも標高は20m程度らしいのだ。とすると、霞ケ浦って全部水没することになる。うーん、どうやってアヤセはあのバス停で野宿したんだろうか・・・・。世田谷の周辺は台地になっているそうなので水没は免れるらしいが、やっぱり都心はだめみたいです。

 実際のところ、この水没は15m海面上昇という設定の元で描かれているらしい。ソースを失念して申し訳ないが、2004年ごろの記事で、作者の芦奈野氏の言葉としてそういう言及があったそうだ。馬堀海岸の話などから見ると、氷棚の崩壊とあわせ、色々地殻変動も起きたと予測される。三浦半島周辺では近代になって地殻変動で海底隆起した箇所もあるくらいだ。水面上昇以外にも地殻変動による隆起・沈降もこの水没に関わっているのではなかろうか。

 さてはて、この水位上昇ということを知った頃、地元の水没シュミレーションをおこなってみた。範囲は大阪西南部である。等高線の20mラインを探す。それに沿ってペンでなぞって行くと、その線よりも海側が海没する地域となる。大阪平野の西端では尼崎市は全滅、宝塚市は競馬場周辺までアウト、伊丹市は千僧駐屯地まで水没、川西市は被害なし、池田市はダイハツの工場周辺まで水没、吹田市は関西大学付近や名神高速江坂周辺までが水没、大阪市内は大阪城本丸と上町台地(四天王寺や一心寺周辺)をのぞき全滅と、まあ惨々たる状況だ。また、三浦半島でも同じシュミレーションをやってみた。まあ、やらなくても結果は見えていたのだが、きれいにイラスト集のような地図が出来上がった。出来上がったおかげでいくつかの登場地点の特定材料にも繋がった。読者諸兄も一度5万図とにらめっこしてみては如何だろうか?
参考文献:国土地理院5万分の1地形図、大阪西南部、横須賀、三崎
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