考察1:A7シリーズについて
 アルファやココネたちはみんなA7型という共通の型番の義体をもつ、自己完結型のロボットである。ただし、アルファは量産試作機として作られたのに対し、ココネはアルファたち3人をベースにした量産型として作られている。ここでまず、一つの疑問がうまれる。なぜロボットを量産する必要があったのかということである。
 
 この世界の背景には、地球温暖化が進んだ影響で海面が20m近く上昇(後程この根拠は述べる)したということがある。その上昇もただ単にじりじり上がったのではなく、何回か大高潮として世界各国を襲ったようだ。そのせいかどうか人口は急激に減り、かつての都心部でも空き地ばかりが目立つようになっている。そこで、人手不足を補うためにロボットを作ろうと計画されたのではなかろうか。ロボットなら大量生産できるし、基本的に病気もない。怪我をしても大きくなければ部品交換で簡単に直る。当時の開発者達の思惑はそんなものだったのではないかと思える。しかし、6型まではうまく作れなかったみたいで、まともに人として自立して生活できるようになったのはA7タイプからではないのだろうか。そのA7タイプにも最初は欠点があったみたいで、アルファは動物性蛋白質がうまく分解できないようだ。これについてはココネたちA7M3型機は克服しているようで、彼女達は普通の人と変わらない食生活を送れるようだ。
 
 ここで二つの疑問が出てくる。1つは「なぜ食事が必要なのか」ということ、もう1つは「なぜアルファにA7M3用の消化器を装着しないのか」ということである。
 
 まず、前者について考える。本来彼女達がロボットであるならば、そのエネルギー原としてもっとも有効な物はジェネレーターを積む事である。そのジェネレーターの方式として一番小さくできそうな物は、現存物では水素燃料電池である。多分あと10年もすれば、バイクや車に搭載できるくらいの物が出てくるだろう。しかし、敢えてアルファタイプの開発者連中は、どちらかというとサイボーグに近い形のボディに仕上げている。もし、アルファタイプが単なる人間の替わりの労働者ならば、水を入れるだけで動く燃料電池を搭載しただろう。しかし彼らは、食事でエネルギーを集めるようにした。つまり、人間と変わらない生活を送れるようにしたのだ。このことからも考えられるように、A7シリーズは最初から人として設計されているようだ。A7型が完成した時点ですでに、世界の混乱はそれこそ凄まじい物になっており、人手不足を補うどころか仕事を探し回らないといけないような時代になっていたのではなかろうか?
 
 つぎに、「なぜアルファの消化器を換装しないのか」という事について考える。これについて2つの事を考えた。1つはキャラクターの個性のひとつだから、それがなくなるとおもしろくないというもので、非常にうしろむきな考え方なので、パス。で、2つ目だが、やっぱりそういう大きな部品は非常に高価なので、また、換装作業も簡単ではないのでそのままにしている、というものである。しかし、ここでココネの言葉を思い出そう。そう、A7シリーズならM2だろうがM3だろうが、動物性蛋白の消化にはまったく問題がないらしい。ということは、どうもハードの問題ではなくソフトの問題となってくる。アルファのソフトと言えば、彼女の人格そのものである。そんなもの書き換えてしまったら、それこそアルファの人格を損ねかねない。だからそんな改造はしてないんだとおもう。
(C)1998/2007 Takayuki Kazahaya