ARSENAL Киев4а(Kiev-4a)
Kiev4a




 
 まず初めに断っておきます。私のKiev4aは元々Kiev4だったものです。露出計はいまでも元気に生きているのですが、整備性を最優先した結果、元々部品鳥で余っていた露出計のないKiev4a type2の軍艦ダイキャストを載せています。

 Kievシリーズは元々、大祖国戦争(第二次世界大戦)後、戦後賠償としてソ連がドイツから持っていっちゃったContaxのラインと部品を接収、当時のツァイスの人員による技術指導の下で生まれました。ごくごく初期のKiev-II(КИЕВのロゴがキリル文字で大文字斜体)の前板裏側を見ると、元々のContaxとプレスされていたロゴが叩きだされた痕跡が伺えます。このころから数年のKiev-II、ツァイス製の部品で組み立てられているといわれています。当然沈胴のZK50mmF2も飾り環の銘以外は全部ツァイス製だそうです。そういうレアなシロモノは全部世界中のコレクターが集めきっちゃってるんだとか。

 さてはて、このKiev4aはKiev-IIの改良型です。Kiev-IIの元をたどればContax-IIにたどり着きます。戦前のドイツにおけるContaxの価格はベラボーに高かったそうです。それがいまや諭吉級戦闘員すら必要のない価格で手に入っちゃいます。ソ連製ハラショー!!。もちろんソ連製です、本家Contax-IIやContax-IIIとは比べるもなく、製品にバラつきが存在します。もちろん後々のメンテナンスで調子を取り戻したり、本来の性能を発揮したりしているボディも多々あります。私の家に来たKiev4aもそんな1つで、アパーチャーマスクを触った形跡があるのでどうやらリボン交換済みの機体のようです。巻き上げに微妙なゴリがあるので再注油必須っぽいですが、前回入手したものの復旧不能だったKiev4a type2と比べるとはるかに良好な機体でした。。

○使い勝手
 まず他のレンズ交換式RF機と比較してContax-II系の素晴らしいところは有効基線長の長さ。RF機のピント精度は有効基線長に比例します。このずば抜けた有効基線長の長さが大口径レンズでのピント精度に繋がります。また、Contax-IIが発売された1930年代において、最大のライバルだったライカに対する最大のアドバンテージが一眼式ファインダーでした。バルナックライカはご存知の通り、距離計とフレーム用とファインダーが別になっていますからね。ソ連はZorki-3やFED2などのバルナックコピー機でも本家ライカより先んじて一眼化を済ませちゃいました。シャッタースピードも1/1250sまであります。あるけど絶対この速度の精度は出てないと思います(爆

 利点があればダメな点も或るわけでして、まず1点は裏蓋の強度がかなり貧弱で手で押して凹んでしまうこと。質の悪いアルミ材料を使ってやがります。私は部品取りのKiev-IVa typeIIを1台持ってるので、軍艦部の部品とともに共食いで部品を流用してなんとかしました。次にダメな点はファインダーにブライトフレームがない点。やっぱりブライトフレームがないのでどこまでが視野なのか良くわかりません。またアイポイントがめがねを使用しないことを前提にしているのはZorkiと同じで、メガネを使用していると視野の7割程度しか見えていません。視度補正に関してはどうやらContax純正の視度補正レンズがボルトポンらしいです。

 フィルムの装填はスプール利用です。スプールが付属してこないボディも多いのですが、Contax-Kevは普通のパトローネに入ってるスプールで代用できますので、ZorkiやFEDほどは苦労しなくて済みます。ただしこのスプール、基本的にフィルムカットをしないと使えません。ツァイス純正だと現在のフィルムエンドのまま使えるんですけどね。私が持っているArsenal純正は2種類。1つは単にタンを突っ込むだけのもの、もう1つは突っ込んだタンをバネで抑えるタイプ。でも1つともフィルムを突っ込むところが真ん中にしかあいてないんですよね。Zorki用みたいにフックで引っ掛けるタイプが一番使いやすいんですけどね。元々Contaxはマガジンを使ってダブルパトローネで使う仕様です。現代でもフィート缶用の詰め替えパトローネを上手に使えばダブルマガジンにだって出来ますから、自家現像な人には結構便利な構造にもなっています。

○Contax、Kievのシャッター速度選択
 Zorki-4の項目で儀式があると書いたのですが、こいつにもあります。Contax系がバルナック系に対して持っていたアドバンテージの1つが、シャッター速度の変更は巻き上げの前後どっちでも出来ますよ、というものでした。しかしそう甘いことはありません。こいつにだって儀式があります。確かに巻き上げ後でもシャッター速度の変更が出来るのですが、これやっちゃうと構造上の問題で、Contax系のアキレス腱であるシャッターリボンの寿命を縮めてしまうのです。ですからZorkiやFEDとは逆で、シャッター速度はチャージ前に設定しておかないとダメです。逆に言うと儀式らしい儀式はこれ1点で、あとは適当に使えちゃうんですけどね。

Kiev-II/III/4のお値段、上がってきているそうです。特にキリル文字前板のKiev-IIは結構値上がりしてるんだとか。狙うなら今のうちっぽいです。
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