4EP1 TDM850 1992 Japan
 スーパーテネレ時代、よく言われた言葉がありました。「これってなんやっけ、そうそう、TDMやんな!」。しばくぞワレって思いつつにっこり微笑み「いえいえ、TDMのご先祖様のXTZ750ですよvv」と切り替えしたもんです。まぁ私の91年型XTZ750と92年型TDM850は塗装がほぼ同じなんで、間違えられても仕方がないんですけどね(あの91の黒テネレは国内にほとんど存在しない色でした)。そのせいもあって乗り換えたとき「やっと風早君らしくなった」と周囲からは言われたもんでした。
管理人の4EP1-TDM850(2007年04月最終SPEC)

     
主なスペック
機種コード 4EP1
全長/幅/高 2180/795/1265mm
乾燥/装備重量 199kg/229kg
原動機種類 水冷DOHC5バルブ2気筒
排気量/径/行 849cc/89.5×67.5mm
最大出力 72ps/7,500rpm
最大トルク 7.8kg-m/6,000prm
タンク容量 18リットル(予備3.5リットル)
主な変更点
住友MOSブレーキキャリパ
YZF-R1用14mmマスタ
デイトナ ミラーホルダー(ニッシン製マスタ用)
GIVIエアロスクリーン
OHLINS リアサスペンション
LED照明化
スモールライト
主な追加装備
海外仕様純正リアロングフェンダー
海外仕様純正シート
海外仕様スモールライト(LED化済み)
GIVIモノラック+モノキーベースM2
GIVI E360互換40リットルトップケース
Krauser System K2 パニアケース 30L
AG200用クラッチレバーストッパー
使用タイヤ
前輪:MICHELIN Pilot ACTIVE:110/80-18 58H
後輪:MICHELIN Pilot ACTIVE:150/70-17 69H
  
 
4EP1-TDM850 インプレッション
車体関連
 まず予備知識を与えずに車体を引き起こさせてみたときにテスターらが口をそろえて言うのが「軽い!」ということ。実際は乾燥198kg、装備220kgで、排気量的には「やや軽い」の部類に入りますが、引き起こしをした感想の多くは「装備200kgくらいの重量に感じる」というもの。10v系エンジンを中心とした集中マス設計が効いています。このマスの集中化は後述するハンドリングにも影響を与えています。ポジションはアップライトでやや遠めのハンドル位置です小柄な人だとハンドルが遠く感じてしまうんじゃないかなぁと思います。この頃のヤマハだと大体こんなもんですけどね。ステップ位置はやや前気味で口の悪い人に言わせると「超殿様」。足付きはオーリンズ投入前は両足べたべたでした。オーリンズを入れたら両足がやや浮く程度。でも膝の曲がりがねぇ、ってこの辺はシート関連で後述します。

 積載に関してはノーマルでも結構良好なほうだと思います。広いピリオンシートに荷物の固定しいやすい形状のグラブバー、サイドバッグを使用してもマフラーと干渉しづらいダウンマフラー。シートカウル下部には紐かけ用の収納型フックも内蔵しています。このバイク、積載に関する拡張性がかなり高く作られています。元々欧州での長距離ツーリングを主ターゲットに作られていますので、向こうでの使用状況を鑑みパニアケースの増設がしやすいようになっています。クラウザーK2、GIVIモノラック、どちらを設置するにしてもシートフレームに設置用のネジ穴が切ってありますので、そこを積極的に利用して設置する設計になっています。そのおかげで私はK2とGIVIの共存に頭を抱えたわけなんですけどね。

 シートに関しては個人的な感想ですが、前下がりがキツくてちょっと不満。もうちょいフラットなほうがいいかなぁって思います。あともう少しハイシートだったらよかったかな、ってところです。この辺りは将来的にカールズバットさんでシートを作ってもらって解決する予定です。前述の通りシートとステップの距離が結構近いので膝の曲がりが深いのです。私はXTZ750時代から膝の曲がりは浅いほうがステップ荷重を掛けやすくて好みだったりするんですよね。YZF1000Rもそういう点では私好みの車体でした。現在シートは輸出仕様の3VD用がついていますが、タンデムベルトの有無以外に国内仕様と差はありません。
エンジン関連
 4EP/3VDは4TX/5GGと違い、いろんなところでXTZ750の雰囲気を色濃く残しています。実質的にスーパーテネレをオンロード専用に特化させた車体、と言えると思います。まず一番の特徴はエンジンの出力特性です。アイドリングは1100rpmが規定回転数なんですが、1000rpm弱程度まで回転が落ち込んでもほとんどエンストすることはありません。また、1500rpmも回っていれば4速からでもそのまま普通に加速可能な低速トルクを発揮します。反面、アクセルをがばっとあけると簡単に8000rpmのレッドゾーンまで到達するのですが、あまりに簡単に吹け上がってしまうので、上のほうでのパワー感は薄いです。薄いですけどちゃんと加速してるので気が付いたらエラい速度まで出ています。また、トルクという点ですが、タンデム状態で10%ののぼり勾配を走行中、2000rpmから普通にシフトダウンせずに4速でも再加速できてしまったりします。こういう芸当はテネレでは出来なかったので、このあたりは+100ccの恩恵って感じです。

 ギア比も結構ワイドに振られています。後継の270度クランク搭載の4TX/5GGでは2〜5速がXTZ750やTRXと同じになったのもあり、「6速が欲しい」という声が良く聞こえていました。しかし4EP/3VDでは5速にオーバードライブが設定されており、また2次減速比もロング気味になっているため、3000rpmだと4速で70km、5速で90kmになります。5速2000rpmで60kmでも普通に走れるには走れますが、私は必要なアクセル開度や負圧とかも考え、街中ではほとんど5速は使いません。4TX/5GGが5速3500rpmで80kmなのとずいぶん対照的です。
足回り
 続いて足回りですが、これまたテネレ同様にブレーキでサスを沈めて荷重を発生させて旋回、ブレーキリリースとアクセルオンでキャスターを起こして車体を起こすという動作をすると面白いように回ります。バンクしてからのコントロールは基本的にリアブレーキとアクセルで行うタイプ。完全なリアステア車体ですね。白バイ乗りが出来ないと回ってくれない車体です。ハンドリングはいたってヤマハ的。回らせ方さえ判ると山道はすいすい走ります。しかしフレームの剛性がそんなに高くないため、スーパースポーツが得意とするような中高速のコースは苦手とします。
#某マンガのク○ーンは作者F氏が試乗すらせずに書いたと思わざるを得ない描写です
#TDMに倒立入れてあんな走りさせたらフレームが負けまくって全然曲がらない絶叫自殺マシンに仕上がります
#まぁ恵のKSRにブチ抜かれる程度ですし、クイーンにやられていた某工大の奴らは……(ちーん


 XTZ750から劇的に改善されている点はブレーキです。凄まじく効きます。ノーマルの同径4PODは低速コントロールはOSに引けを取らないくらい良く効きます。コントロール性はMOSのほうが格段に上なんで、コントロール重視で私はMOSに交換しちゃいます(ヲィ。
乗り始めてからびっくりした点
 持って帰ってきて整備していて最初に驚いたことは、リアブレーキキャリパのマウントとスイングアームがボルトで固定されていること。チェーンテンションを調整するためにわざわざ固定ボルトを緩めないとダメという構造に唖然としました。どんな構造しとんねん、このバイク。

 4EP1と初期の3VDだけですが、シートの一部がタンクとベルクロで固定されています。どんな構造しとんねん。3VDの後期はどうだったっけ。で、これがまたシート前端だから走行中にはがれて風でパタパタしちゃうもんで、途中からはスナップタイプに改良されちゃいました。でも4EP2の紫色な対策品はあっても、4EP1の黒い対策品が無かったりします。サイテー。

 ノーマルのリアサスに可変プリロード機能があります。元々荷物を積んだりタンデムをしたりということを前提に設計されているので、1人乗車時と積載・2人乗車時用ということで、プリロードを2段階に切り替えられる機能がついています。といってもみんな使ったこと無いらしいけど。

 ヨーロッパ向けモデルらしくヘルメットホルダーがありません。「ホルダーなんて飾りです。偉い人にはそれがわからんのです。」といった人がいたのかどうかはともかく(ぉ)、ヨーロッパではホルダーにヘルメットをひっかけておくと盗難被害にあうため、ヘルメットホルダーの設定が無い車種が多いのです。で、TDMの場合はホルダーをつける代わりにシート下にキノコ状の鉄の棒が飛び出ています。
メジャートラブル
 基本的なトラブルですが、XTZ750に近いものが多いと思ってもらってかまいません。まずレギュレーターの故障が多く、レギュレータートラブルに起因する充電系のトラブルも多発します。型番が3TJなんでFZR400R/RRと共通っぽいですね。変換ケーブル経由でYZF-R1のものに交換してしまうのが簡単みたいです。ステーターコイルそのものの型番は3LDでXTZ750のものですので、発電能力的にはXTZ750と同等です。多分60W×2発を炊いても問題ないと思いますけどね。クラッチの容量が低くて鳴きやすいだとか、クラッチがやたら重いだとか、この辺りの解決方法もXTZ750と同等だと思います。4EP特有のトラブルといえばサーモスタットハウジングの熱変形です。常に高温の水にさらされる部分であるにもかかわらず、ハウジングが樹脂製でボルト2本でしか固定されてないときます。そりゃ変形しますよ。エンジン本体や車体構造は至って頑丈そのもの。あまりトラブルらしいトラブルは聞いたことがありません。
購入ガイド
 できれば4EP3を選んだほうがいいです。4EP1は限りなく避けるべきです。シートの前端とタンクの結合がなんとベルクロなんですよ。で、ベルクロがへたるとぺらぺらとはがれるようになります。サイテー。それ以外は特に気にすることもないと思われます。外装は黒と紫ならプラ部品の在庫はありますが、シートカウルの「TWIN850」のデカールだけが販売終了となっています(05年10月現在)。アッパーカウルの「TDM」のロゴはまだ在庫アリでした(05年10月現在)
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