ZC33S SwiftSports:CarozzeriaのTS-J170Aや160Aのこと
 昔、親父の車のRA1オデッセイに装着しようと買ったけど面倒くさくなり、自宅のオーディオ用BOXに装着してしまっているスピーカーが、カロッツエリアの90年代名機TS-J160A。これ、今も自宅で現役だったりします。音スッゲーいいんですよ。

 ZC33Sのリアドアのスピーカーを変えるにちょうどいいものがなく悩んでいたんですが、ヤフオクでかなり程度のいい同機種が結構格安で出ています。が、ほとんどの商品に本来必要なはずの付属品コイルがついていません。あれ?そういや家のスピーカーはどうだっけ?と思ってスピーカーBOXから外してみたら、ちゃんと0.27mHのコイルが装着されていました。とりあえず付属品付きで結構状態のいい奴があったのでさくっと落札。
 
○カロッツェリアTS-J170AやTS-J160Aの回路について
 というわけで「じゃあヤフオクでよく出ている付属品のコイルなしだとどうなるのか?」という奴ですが、結論から言うと「ウーハーから音が出ない」という結果になります。実際、みんカラのレビューを見てると「低音が出ない」みたいな奴もあったのですが、おそらくヤフオクかメルカリで中古で買った奴がコイルなしだったので、ウーハーがそもそもまともに音を出してないんじゃないかと踏んでいます。で、なんで付属のLがなければ音が出ないかという奴ですがこのスピーカーユニットの内部接続構成が下図のようになっているからです。
  
 
 回路図を見ればわかる通り、コイルをつながなければツイーターからしか音が出ないようになっています。何度かこの手の出品で出品者に対し「付属品がなければ音が出ないはずだけどどうやって確認したの?」と質問したら必ず逃げられます。中には個別に繋いで音を出した〜みたいな言い訳をするんですが、大体の出品者はこいつが付属品がなければまともに音が出ないとは分かっていません。

 で、実際にこのコイルがどういう働きをするかというものですが、結論から言うと簡易的なクロスオーバー・ネットワークになっています。ツィーター側にスピーカーとシリースで入っている4.7uFのバイポーラ電解コンデンサはハイパスフィルターに、付属品の0.27mHのコイルは変則的な組み合わせのローパスフィルタなります。どちらもスピーカーのインピーダンスを疑似的に4Ωの抵抗と見立てて構成している感じです。
 ただ、ローパスフィルタに関してはこの構成でちゃんとフィルタとして効くんだってのが驚きでした。通常、コイルの位置はコモン側ではなく入力側に挿入されますので。念のためLTSpiceでスピーカーのインピーダンスを抵抗と見立てて回路を構築し、.acコマンドで周波数解析をやった結果が下図です。LTSpice、解析結果を数値で出せるのでEXCELでグラフ引き直せます。
 
 
 この図ですが、26dBのところが通常の出力レベルで、下がるほど音量が小さくなるという奴です。おおむね4kHzあたりにクロスオーバーポイントが存在することになり、この値はカーステのクロスオーバーポイントとしては一般的な値になります。この次のモデルのTS-J1700シリーズからはスピーカーとは別に用意されたクロスオーバー・ネットワークが付属するんですが、そちらはちゃんとスピーカーとは別にフィルター回路を設置した本格的なものになります。ウーハー側は実はローパスフィルタはなくても特に問題ないんですが、ツィーター側はハイパスフィルタが入っていないとそもそもツィーターが壊れてしまいます。
 とまあ電気的特性を解析するとこういう感じなので、ヤフオクでこいつが出品されている場合、付属品のコイルがついてない奴はスルーするか自分で0.22〜0.3mHのコイルを用意して渡ってやるしか手はありませんのでご注意を。
 
○オマケ:オーバーホール
 電子工作をしてたり電子回路系の仕事をしてる方は大抵皆様ご存知なのですが、電解コンデンサには寿命がちゃんとあります。寿命については色々な考え方があるんですが、私の勤務先の考え方としては「運転してなかったとしても新品製造時から時間が経っていれば寿命が来ている」としています。今回のTS-J170Aはツィーターのハイパスフィルタに無極性電解コンデンサの4.7μFがついていますが、このスピーカーは恐らく99年21週製造なので、本稿執筆次点での2023年4月末だとほぼ24年経過しています。10年くらいで寿命になっているとすれば、当然とっくに寿命が来ているわけで……。というわけで交換します。
 
 
 交換するターゲットはこいつ、黒い奴!63V品だけど、インピーダンスや出力ワット数から考えて、50V品でも充分大丈夫っ。というわけでニチコンのmuseシリーズを選択。というかシリコンハウスで手に入る無極性がこのシリーズだけだったというね。
 
 
 交換そのものは半田付け技術があればそんなに難しくはないです。スッポンとか半田吸引器で半田を吸い取りリード線を外せば、コンデンサを接着してる樹脂を剥がすとべろっと外れます。白黒の線はツィーターの配線なので切断しないよーに。付けるときは長い方のリードをフォーミングし、てひっかけ、短い方の奴もフォーミングでひっかけてから切断し、半田付けすればOKです。
 気を付けておかなければならないのは2点。1点は空中部分が長い電解コンの足にはちゃんと絶縁用被覆を巻いておくこと。今回はエンパイアチューブ使ってますが、オリジナルはビニルチューブでした。2点目は交換が終わればコンデンサ本体はスピーカーフレームにちゃんと固定しておくこと。
 
 交換後は念のためちゃんとアンプと繋ぎ、試験用のスピーカーBOXに固定して音出ししています。当然ちゃんと音が出ててめっちゃいい音していますし、普段常用してるTS-J160Aと音質的にも変わらないので、動作も問題ないと判断しました。
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