TT250R Raid クラッチが焼けるとどうなるか
 TT250RとRaidの鬼門はクラッチです。ヤマハの大半がそうやんけ!というのはまさに指摘のとおりで、4JG系セローといい、TRXや270度クランクのTDM850なんかもクラッチが鬼門だったりします。実はTT250R、年式によってオイル指定量が変わっており、中期型〜豪州逆車までは1200cc、しかし初期型は1000ccで200cc増えています。というのも、初期型で半クラ多用によるクラッチ焼けが続出したという経緯があるからです。で、純粋にオイルの量を増やしてクラッチが漬かってる割合を増やせば焼けにくくなるやろうってのがその対応だそうで^^;;

 それは兎も角として、私の持っているTT250R Raidは実は、1オーナー目からすべてのオーナー履歴がはっきり分かっている個体です。バイク屋さんでの情報によると1オーナー目は結構下手な割にはプラザ坂下や名阪、生駒などのコースを走るのがすきだったようで、しかしコース用にバイクを買い足すこともせず、レイドで走っていたそう。私が譲り受けたときからクラッチはずっと怪しかったのですが、色々我慢して1年乗ったけどもう我慢ならん!というわけで、クラッチ交換に踏み切りました。まあ、レイド手放してビート買おうとして家族の反対があったから延命する、というのも理由ですが。
 
○必要な道具と材料
 必要な部品のリストは以下です。あとこれにオイルですが1.2L用意しておくといいでしょう。
名称 部品番号 数量 図番 見出
プレート,クラツチ 1
3XJ-16324-00
5 13 10
プレート,フリクシヨン
3XJ-16321-00
6 13 9
ガスケツト,クランクケースカバー 2
4GY-15461-00
1 11 24
 
○実作業
 今回はめんどくさいのでバイク屋でやってもらっていますが、自力でやってもコミコミ1時間もあれば終わる作業です。また、私の車体でもおきたことですが、スタッドボルトとスタッドナットが固着しており、スタッドナットを抜こうとしたらスタッドボルトごと抜けてしまっています。まあ、どうせ次はずすこともないのでエンジンオイルでびちゃびちゃにして無理やりボルトとして締めちゃいましたがw
 
 さて、手順。まずアンダーガード(装着されていれば)を外しエンジンオイルを落とします。装着されているならばオイルクーラーのケース側フィッティングも2つとも外します。次に、マフラーのヘッド側だけ外して上にズラし、クラッチカバー上のオイルラインを外します。その後、右ステップ、キックアーム、ブレーキペダルを外します。ケースカバーを留めているボルト(長さと位置を間違えないようにチェック)を全部外し、プラハンでコンコンと軽く小突いてやれば、クラッチカバーが外れます。

ク ラッチボスのネジ5本を抜いたらカバーとスプリングが外れますのでごっそり外します。そのときにクラッチボスのスライド面の状態をチェック。外したところで一通り右側のチェックもしておき、不具合があれば追加発注して交換したほうが得策です。何事もなければ新品のクラッチプレートとフリクションプレートにエンジンオイル(落とした廃油でOK)を塗りたくり組み込み、ボスカバーをつけ、スプリングとボルトを締めれば終わり。
 
 次に、クランクケースとクラッチカバーにこびりついてるガスケットをスクレーパーはがしオイルストーンで平滑にします。そして、ダウエルピンを2本ともケース側へ移植し、新品のガスケットを取り付け、クラッチカバーを組み付ければとりあえず終わり。あとは作業用に外した各部品を組み戻し、エンジンオイルを1.2L突っ込んだら作業終了です。ちなみに年間2回くらいしか交換しないからと相変わらず300V突っ込んでます(笑
 
○クラッチが焼けてしまうとどうなるか
  写真は取り出したクラッチ一式ですが、極端に焼けているとこんなドドメ色になります。今回出てきたやつは久々に突き抜けて酷い状態のモノでした。
 こうなるとクラッチプレートの基材もフリクションプレートも熱で変形してしまいますのでクラッチはまともに切れないし、ジャダーは起こすしで、エンジンにとっては最悪の状態になります。ここまで焼くのは相当へたくそです。今回、うちのレイドのクラッチが焼ける原因を作ったのは一番最初のオーナーです。あまり上手ではないわりにプラザ阪下などのコースで走ることがすきだったようで、パワーが足らないのをずいぶん半クラで補ったり無茶していたようです。もちろん、その無茶がたたった結果、クラッチプレートのコルクは完全に焼け焦げて消し炭になり、フリクションプレートに関しても本来は銀灰色なのにドドメ色に変色した上、フリクションプレートの跡までしっかりこびりついています。私が初心者のころにDT200WRで林道や半ゲロ、コースを走っていても、こんな焼いたことないです。ここまで焼けるのはボス未改造の4JGセローくらいなもんです。

 ちなみに、クラッチがここまで焼けていた間じ実際に体感した症状はといいますと、
  • ミッション操作に恐ろしく不具合が出る(エンジンで合わさないと無理)
  • 冷間時にクラッチ切って1速に入れるとエンストする
  • 中高速域から加速しようとするとクラッチジャダーが出てパワーロスする
  • 低回転で5速6速を使って巡航(60km〜65kmくらい)しようとすると激しいチェーンジャダーが出る
  • 恐ろしく燃費が悪化する(クラッチジャダーでパワーロスする関係で)
というものです。

 どれが一番といわれてもすべて致命的というか、よくもまあこれで1年も耐えてたな俺というぐらい酷かったです。ちなみに、新品だとクラッチプレートは薄い黄土色、フリクションプレートはアルミの綺麗な銀灰色をしています。交換したらクラッチの遊びが激変したのと、ミッションタッチが恐ろしく良くなった、冷間でクラッチ切ったまま1速に入れてもエンジンが落ちなくなった、60km程度で6速に入れてもジャダーが出なくなったなどなど、いいこと尽くしです。
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